ブログに書くには丁度いい野球ネタ。
しかし今回は書くのが難しい。
余りにいろいろな思いが籠っているからだ。
ならば、出来るだけ事実そのままに、文体としては少し気取ってみようとした。
長文になった。あしからず。

最後の背番号は13。
夏大会、これで負ければ引退である。
九回表、8対2。チームは負けている。ノーアウト一塁で打席が来た。
代打・僕。
バックネットに背番号13を見せると、代打を告げるウグイスコールが響いた。
僕は、守備力なんてチームで一番無かった。
しかし、飛距離はチームトップレベルだった。
ただ、ミートは無かった。
だから代打起用が多かったのだが、
5月ごろから打つ気が先行し過ぎてか調子を落としていた
かつては、代打での登場でベンチ観客一同が一番盛り上がる選手だったが、
調子を落とした今でも、
球場、特にスタンドはその日一番ではないかという盛り上がりを見せてくれた。
相手の応援は、吹奏楽のトランペットの音も高らかなものだった。
対するこちらの応援は、楽器など無く、スタンドから大声で届かせる根性応援だった。
必死に名前が叫ばれるのが打席にも聞こえる。
ウグイスコール「代打」のあとの大歓声は生涯忘れることは無いだろう。
ウグイスコールに颯爽と
素振り二回 足固め
ここが腕の見せどころ
輝く時が来た
一世一代の晴れ舞台。
この一打席は野球人生の集大成だ。
サインを見る。
当然といえば当然だが「打て」だった。
一球目。フルスイングする。
しかしカーブが外へ逃げ、バットは空を切った。
ベンチを見る。サインはやはり「打て」。
二球目。
相手投手のカーブが内角ギリギリを攻める。
しかし審判の判定はボール。
あと少しでストライクだった。
三球目。
やはりフルスイングする。
バットがボールを捕らえたはずだった。
ボールの下をかすってファウル。
試合当日でも、調子の悪いのは如何ともし難いなと思った。
追い込まれてしまった。
しかし不思議と焦りはしなかった。
自分のバッティング(要するにフルスイング)をするだけだ。
妙に冷静で、勝負を楽しんでいる自分が居た。
そしてやっぱりサインは「打て」。
四球目。
投手の投球に、やはりフルスイングする。
外角に逃げるスライダーだった。
バットは、ボールを捕らえることは無かった。
最後の打席は三振だったが、最後の一球までフルスイングが出来た。
あとに残ったのは、悔いではなく、やりきったという感覚だった。
足の骨が折れ、腰の背骨が真っ二つになり、心が折れそうになり…
しかし、確かに十年間戦い抜いてきたんだという感慨も一入だった。
ベンチに戻り、監督が一言「ナイススイング。」
涙があふれてきた。
試合中だというのに、涙が止まらなかった。
流した涙は、悔いではなく、喜びと感謝の涙だと思った。
代打起用、さらには四球とも打てのサインを出して下さった監督にただただ感謝である。
そして十年の長きに渡り野球ができた事を誇りに思う
野球には、ドラマがある。
野球はいいものだ 改めてそう思った。